四天王像は「造形心木」
 
木胎塑像の特徴 東大寺戒壇堂・エックス線撮影で判明

 奈良・東大寺

 天平塑像の傑作とされる東大寺戒壇堂の国宝・四天王像の心木構造が、従来推定されていた角材や板を組み合わせた木骨状の「構成心木」ではなく、より木偶に近い「造形心木」で、「木胎塑像」の特徴をもっていることが奈良国立博物館のエックス線透過撮影調査で分かり、同館と東大寺が9日、発表した。奈良朝の仏像制作技法の研究に一石を投じる画期的な新知見として注目を集めそうだ。

 天平時代の代表的な塑造神将形立像としては同四天王像と新薬師寺12神将像、東大寺法華堂執金剛神像がある。新薬師寺像は東京芸術大学の研究グループにより同様のエックス線撮影がすでに行われていて、その心木構造は構成心木であることが解明されている。
 これまでは三者ともよく似た技法で制作されたと考えられていたが、今回の調査で戒壇堂の像と新薬師寺像では基本構造が大きく異なることが分かった。
 二者の相違の原因について稲本泰生主任研究員は「制作年代の違いによるものか、工房や制作環境の違いによるものか、さまざまな面から究明していく必要がある」と話している。
 年代の推移に伴って構成心木から造形心木へと塑像心木の構造が展開したと想定し、二者の制作年代が離れていると考えることについては、この二系統の心木が並存していた可能性を物語る作例があり「現時点では判断できない」としている。

 今回のエックス線透過撮影は、今年4月から7月に同館で開催された特別展「大仏開眼1250年 東大寺のすべて」に出展された機会を利用し、7月上旬に行われた。広目天以外の三体(持国天、増長天、多聞天)の撮影は史上初めて。広目天は約50年前に一度エックス線撮影されたが、これまで塑像の場合は鮮明な画像を得るのが難しく、構造が明らかになっていなかった。今回は通常のエックス線透過とは異なる方法(コンピューテッドラジオグラフィ)を採用し、鮮明な画像を得られた。
 持国天の内部構造を見ると、頭部から胴部にかけての心木は一材製で、木偶状に形整され胸から腹のあたりが大きく刳(く)られている。またこの頭部から胴部の心木に横木をわたし、その両端に両腕の心木を打ちつけて固定している。脚部の心木は邪鬼の心木に柄穴をあけて、深く挿入している。瞳にはめこまれた物質はほぼ完全な球形。鎧(よろい)の裾(すそ)の縁に、補強するための銅線が入れられている。両手先は木製で後から補ったものであることなどが分かった。
 基本的な心木構造は造形心木であるが、肩の部分は造形しておらず、木骨状の構造の要素を含んでいる。基本的な心木構造が造形心木であることはほかの三体も共通していた。
 また新薬師寺像は基本心木に薄い折板を組んで縄を巻き、その上から荒土をつけて制作しているが、戒壇堂の像は心木が太く、また持国天像の左脇腹は塑土の層が極めて薄いことも分かり、同館ではどのように土をつけたのかも今後の研究課題としている。

 鷲塚館長は今回の調査について「今後の研究推進に重要な、想像をはるかに上回る成果が上がった」と話し、「新薬師寺の像は銘文から天平年間の作品と推測されているが、本当に天平年間の作なのかも含めて、さまざまな見地から研究しく必要がある」としている。
 同館では四体すべてについてより詳しく画像を分析して構造図解を作成し、東大寺史や彫刻史に占める意義を再検討して研究報告書を刊行する予定。

               
     2002年10月10日  -奈良新聞 より-

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